2012年03月31日
マラソンランナーは腎臓力

「マラソンランナーの強さは、心肺機能や脚筋力よりも最終的には腎臓力だよ。」・・・この言葉は、野口みずきさんを育てた元監督の藤田信之氏の言葉だそうです。もちろんこの言葉は、楽しむために走るジョガーに対してではなく、勝つために走る競技者に対する言葉だとは思いますが、一定の時間走るという行為が身体にどのような影響を与えるかという視点で考えれば同じなのかもしれません。
増田明美さんがエッセイで紹介していましたが、競技者は不健康と言わざるを得ない状況だといいます。マラソン選手の場合、1日約40kmを走りこみ、レースとなると身体を限界まで追い込みます。筋肉や骨だけでなく、腎臓をはじめする内臓も疲弊してしまうそうです。
特に腎臓は、老廃物を濾し取ったり、体内の水分調整を、骨を強くする活性型ビタミンDの生成を行うところです。特にレース中のスペシャルドリンクと言われる自分の身体にあわせた、水分や栄養補給が結果の鍵を握るというような状況もよく目にすることがあるのはこういうことなのかもしません。いうならば、腎臓の機能が落ちれば、走りたくでも走れないということになってしまうそうです。
マラソンなどの長距離の競技では、大量の汗をかきますがその時に、ナトリウムも同時に排出してしまいます。当然、身体はこれを保とうとするわけですが実は、この「水分の保持」と「ナトリウムの濃度の維持」というのはお互いに衝突しあってしまい身体の中では云うほど簡単なことではないということらしいのです。
汗をかいて脱水すると、頸動脈にあるセンサーが血圧の低下を感知し、色々な防御機能が始動します。その一つが、腎臓に「体内に水を保持せよ」と命令を下すことです。その結果、排尿の量が少なくなり尿は濃縮されるというわけです。
また、発汗により口が渇くので水を飲みます。しかし、腎臓には体内に水を保持するための命令がされていますので、飲んだ水は身体の中に保持されてしまします。その結果、さらなる低ナトリウム状態になってしまいます。つまり、身体には相反する矛盾の状態が出来上がってしまい、再び腎臓には、水の排出量が促進する命令が下されます。
その結果血液が濃縮されますので、低ナトリウム状態は改善されますが、血液中の水が尿として排泄されたため再び低血圧を引き起こすという「低血圧→口渇→水を飲む→ナトリウムの低下→低血圧」の連鎖状態に陥ってしまうのです。この連鎖状態が続き、汗で失われるナトリウムの量が一定量を超えたところで吐き気、痙攣、意識障害などの低ナトリウム症を引き起こすことになるとともに、腎臓を始め身体にも大きな負担をかけてしまうということになるのです。
近年、ランニングをする人が急増しているようです。私の周りにも大会に参加したりという人がいますが、身体の仕組みを良く理解したうえで、楽しく走るための工夫が必要なのだと思います。
一つは、血圧が下がるような状態になる前に早めに水分補給をすることと、水分と一緒にナトリウムを補給するだと思います。どのくらいナトリウムを補給すれば良いかと言いますと人によって汗の中の含有量などが異なるために一概には言えないというのが現実なようで、トップアスリートがそれぞれのスペシャルドリンクを愛用しているというのもそういう理由からなのだとすると、納得という気がします。
どんなことも、自分の身体を良く理解してほどほど・・・ということが大切なのかも知れません
Posted by toyohiko at 12:07│Comments(0)
│身体のしくみ
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