2012年02月08日
乳酸菌研究のいま・・・(Ⅱ)

昨年に引き続き「東海地区乳酸菌研究会」に参加してきました。乳酸菌研究会といっても乳酸菌だけではなく、東海三県の名古屋大学医学部、愛知県衛生研究所など医療や衛生関係の14の機関の研究者の方々の微生物全般に関する研究の成果を報告する会です。
今回は16項目の研究報告がなされましたが、全体の印象として細菌の検出技術に関するもの、特に検出精度とともに、いかに検出時間を短縮するかというものや、細菌やウィルスの人体に関するメカニズムの解明の話など、遺伝子レベルの研究がほとんどで、微生物の世界に未知の部分が多くかつ非常に繊細なものであるということを改めて痛感しました。
特に、細菌検出の技術に関するものでは、MRSAなどの薬剤耐性菌の検出レベルの迅速化など、感染症の発症時の対応に関するものや、一般的な食中毒菌として知られているカンピロバクターなどを、いかに少量の食品から短時間に低コストにできるかというものもありました。
これらの、研究はまさに「抗生物質の普及による細菌やウィルスの進化に対する人類の不安」や「食の安全・安心」など社会ニーズに直結した研究でもあります。
そのなかで、現在食品に利用されている乳酸菌の感染症予防に関する研究もありましたので、ここで紹介します。
1つ目は、順天堂大学の関連高齢者施設入所の高齢者を対象とした研究です。高齢者の場合は、基礎体力の低下とともに免疫力も低下するために感染症のリスクが高いことと同時に、限られたエリアに共同生活をしているために、一度発症してしまうと集団感染のリスクも高いということが想定されます。
そのような高齢者を対象に、市販のLcS乳酸菌の入った飲料の継続飲用試験を行った結果、ノロウィルス感染症胃腸炎に起因する発熱日数の短縮や、便秘・下痢などの腹部症状の改善効果、さらに腸内の有害菌の減少が見られたという報告です。
2つ目は、インドのコルカタ市に居住する小児4,000名弱を対象に同じように、LcS乳酸菌の入った飲料の継続飲用試験をおこなったものです。インドでは、日本国内とは違い、宗教的な慣習ともに、衛生状態が良くないために小児急性下痢症というのが深刻な問題になっています。
この飲用試験の結果、日本国内の高齢者同様、急性下痢発症に対して改善効果が見られたというものでした。
細菌やウィルスは、発現から消滅までのサイクルか短いために、進化の速度が非常に早いというのが現状です。その進化に伴って、新たなる不安が増えることもあれば、人間生活の向上に寄与するものもあります。このような微生物の研究も複雑で難解ではありますが、実は遠いようで、身近な存在なのです。
Posted by toyohiko at 15:10│Comments(0)
│地球を考える
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