2011年09月24日
アタマはスローな方がいい!?

「アタマはスローな方がいい」という一瞬「えっ・・」と思わせるような言葉、2005年に動物行動学者の竹内久美子さんが出版した本のタイトルです。
そもそも「スロー」という言葉、今でこそ「スローライフ」とか「スローフード」というような良いイメージがありますが、比較的ネガティブイメージであった「スロー」という言葉に「アタマ(頭)」がくっつくとなると「一体どういうことなんだろう・・・・」と思う方もいると思います。
実は、この「スローがいい」というのは、生物の記憶に関する話なのです。竹内久美子氏によると、ショウジョウバエには記憶にかかわる二種類のCREB(クレブ)というタンパク質があるそうで、一つは記憶の促進性を促し、一発で飲み込みしかも長期間覚えていることができるようになることが実験でも明らかになっています。
つまり、このCREBタンパク質のみのショウジョウバエを作ると「超頭が良い・・天才」ショウジョウバエができるそうです。
しかし、二種類のうちのもう一つのCREBタンパク質は、記憶を抑制する働きを持っているそうです。ここで、肝心なのは何故、このCREBという記憶にかかわるタンパク質が二種類あるのかということです。単純に考えれば、「超頭が良い、天才」をつくる一種類だけで良いような気がするのですが、実はそうだと生物にとって都合が悪いことがあるということなのです。
東北大学脳科学センターの山元大輔氏によると、一発で覚えるというのは一見良いことのように思えるが、そうではないそうです。「たまたまそうだった・・・」という現象を覚えてしまうという危険があるからで、そのために記憶を促進する一方で抑制する仕組みが必要なのです。
一見、呑み込みが悪いように見えるかもしれませんが、そうして様々なケースに遭遇しじっくりと覚える様にプログラムされているそうなのです。
つまり、呑み込みが悪く見える方が、より多くの情報をもとに一つの記憶を構築しているということが言えるために、記憶としての普遍性がより高く社会的に通用する記憶となるということが言えるのかもしれません。
また、記憶の入り口である「視界」に入ってくるものも、スピードによって大きく変化します。車で移動したときに見えるもの、自転車の場合、さらに歩いた時にみえるもの・・・
その中でも、歩いているときが一番発見が大きいことに気づかされることが多いのではないでしょうか。これも、記憶の普遍性に実は大きなかかわりをもっているのかもしれません。
こうして考えると、「スピード」が大切と言います。そんな中、スピード感が必要なこともたくさんありますが、どうやら良いことばかりではないような気もします。
「何故、何故・・・」と呑み込みが悪いように見える人というのは、実はじっくり型で手強い存在なのかもしれません。
「スローライフ」だけでなく、頭も「スロー」な方が良いようです。
Posted by toyohiko at 16:04│Comments(0)
│身体のしくみ
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