2011年06月18日
「食」は人を良くするためのもの

アポロ宇宙計画の時にロケット技術とともに宇宙食の研究も同時に行われました。当時NASAは「すべての栄養素が含まれていること」「排便の必要の無いこと」の二つの条件を満たした完全食を目指していました。
無事帰還を果たした時には、「アメリカの栄養学の勝利」と研究開発に携わった学者たちは称賛されたそうです。しかし、その後研究は頓挫してしまったのです。
栄養上は問題が無くても、「歯磨きのチューブのような食事ではストレスになって日常の仕事が出来ない・・」という宇宙飛行士からの訴えがあったからだそうです。
人間は、栄養を摂れば良いのではなく、「食べる」という行為そのものに楽しみがあり、人にとって生活の糧になっているということがある意味証明された事例の一つということにもなります。
また、シンクロナイズドスイミングの選手のように女性にも関わらず1日4,000kcalの食事を摂ることによって身体のバランスを保っている人たちもいます。
皆さんもご存じのように成人女性の1日の摂取カロリーは2,000Kcalです。つまり約2倍のカロリーを摂り続けることによって、美しく見栄えのする体型をつくっているのです。
シンクロのナショナルチームを率いるシンクロ委員長の本間三和子氏によると高カロリー食を摂る理由として次のことを述べています。
「プールの水温は、体温より低いので水の中にいるだけでエネルギーが消費されます。しかも、1日8時間から10時間もの間水中でトレーニングをする日が続くため、エネルギーが不足すると、スタミナ不足になり、集中力が欠けてしまう」からだそうです。
もうひとつは、シンクロという競技が美しさを競う競技であるというる理由から「出来るだけ、大きく見栄えの良い身体づくりが必要、具体的には、背は高く、頭が小さくて、肩は筋肉がついて幅があり、お尻は高い位置にあって、手足は長いほうが良い・・・・浮力を得るために最低限の脂肪も必要です。さらに、水中で抵抗が少なくなるように胴体はしっかり丸くて厚みのある身体にすることで、体幹をつかっていろいろな技が出来やすくなる」と非常に身体づくりに対しての要求も高いのです。
彼女たちにとっては、食事もトレーニングの一つになっているようです。食事のボリュームだけでカロリーを増やすのは難しいために、ご飯をチャーハンに変えたり、ノンカロリーのお茶よりも100%のジュースなど様々な工夫をしているそうです。
このようにアスリートと呼ばれる人たちにとっては、「食べることが出来る選手が、強くなれる・・・」と言われるほど食べるということを通じ、目標達成のひとつのプロセスとしてモチベーションを高めている人たちも多いのです。
その一方、過剰ダイエットという問題があることも事実です。特に日本人の女性は10代後半から20台前半にかけてBMIが減少しています。通常こと時期のBMIは生理的に増加するものでありこの不自然は減少傾向は米国人男女や日本人男性にも見られない独特ももののようです。筑波大学大学院疾患制御医学専攻内科教授の曽根博仁氏によると、痩せすぎに対する4つのリスクを挙げています。
1.骨密度の低下
2.死亡率の上昇
3.低出生体重児出産率の上昇
4.出産数の低下
さらに3番目の低出生体重児は、成人したのちに胎生プログラミングの影響により糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクが高くなることも解ってきているそうです。
しかし、「なぜ痩せたがるのか・・?」という理由の一つはメディアの影響が大きいそうです。米国では雑誌モデルの70%以上がBMI18.5未満の痩せすぎで、さらに雑誌をよく読む子の方が自身の体型に対する不満が多くきなる調査結果もあるようです。また、フィジーで行われた研究ではテレビが無い地区に、テレビが普及したところ3年後から摂食障害傾向が強まったという報告もあるそうです。
そういう意味では、若い女性自身がメディア自身に対するリテラシーの能力も求められているといえます。
「食べる」という一つの行為についても、感じ方、必要性など様々な受け取り方があります。しかし、「食」という字のように「人」を「良くする」ためのものであることは間違いないと思います。
健康で幸せになる・・・・食卓にそんな思いも添えて、食事をすることも楽しいかもしれません。
Posted by toyohiko at 11:21│Comments(0)
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