2011年06月10日
それぞれ違う「ビフィズス菌」

ビフィズス菌という名前、「お腹に良い菌・・・」なども含めて一般的に知られるようになってきています。このビフィズス菌、動物や土壌などに三十数種類ほどいることが知られています。そのうち10種類の菌株が人の腸管から発見(分離)されています。
このビフィズス菌は乳酸菌の一種で形がV型やY型をしていて、糖を分解して乳酸や酢酸(食酢の主成分)つくることと、酸素を嫌う嫌気性であるという特徴があります。特に嫌気性という特徴は保健衛生の分野で検査培養の方法が難しいなどの理由からも乳酸菌とビフィズス菌と分けて考えることが多く分類がわかりにくいのが現状です。
また、現在わかっている乳酸菌が約2万種類ということからすると酸素に弱いビフィズス菌についての研究がいかに難しいかということがわかります。
2011年1月に発行された英国の科学誌「Nature」に「プロバイオティクス ? 細菌の防御効果」という記事が掲載されました。内容は、果糖をエサにして酢酸を産生するある種のビフィズス菌に、腸管出血性大腸菌O-157に対して予防効果があることが解明されたというものです。
この研究は、理化学研究所、東京大学、横浜市立大学の共同研究グループによるもので、チームリーダーである理化学研究所の大野博司氏によると、ビフィズス菌の産生する酢酸が細胞のエネルギー代謝や抗炎症作用を活発化させO-157などの感染症に関する保護作用を強化させることがわかってきたということです。
ここで、大切なのは「予防効果が表れたのがすべてのビフィズス菌ではない。」ということです。今回の研究では5種の菌株について行われましたが、この5種類の中でも異なる結果が出てくるということです。
この研究によると、ビフィズス菌が主に働く大腸において、特に肛門に近い大腸下部で酢酸を産生出来る特性を持った菌株でのみ効果が見られたということです。
腸内の栄養素は消化吸収されてしましますので、肛門に近くなればなるほど消化しやすい栄養素が少なくなってきます。つまり、大腸下部ではブドウ糖は枯渇してしまってビフィズス菌が酢酸を作れなくなってしまいます。
しかし、果実やハチミツなどに含まれる果糖はブドウ糖に比べて分解されにくいせいか大腸下部にも存在することがわかっています。この果糖をエサにして酢酸をつくることができる菌との違いが、今回の研究での予防効果のあるなしに関わっていることがわかったのです。
私たちは、一つの情報をステレオタイプ的に判断しがちですが、自分にとって必要は情報を整理して利用する力が求められるということの一つかと思います。
食品に含まれる乳酸菌が、他の食品に比べて特別に虫歯のリスクを増大していないにも関わらず「乳酸菌は虫歯になる」という話が多いのも、虫歯の原因菌がミュータンス菌という乳酸球菌であることからのイメージによるものが大きいと思います。
ちなみに、酢酸が感染症の予防効果に良いのであれば「酢」を飲めば大丈夫かというと、消化管で酢酸が分解吸収されてしまい効果はないようです。感染症予防には、梅干しや、酢のものの方がまだ効果があるようなのでご注意を・・・
Posted by toyohiko at 10:10│Comments(0)
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