2011年05月27日
食中毒はなぜ起きるのか

ひとくちに食中毒と言ってもその原因になる物質や現れる症状は多種に及ぶため、時代とともに定義や予防のための考え方も変わってきているのが現状です。一般的には、「飲食を起因とし、急性胃腸炎を主症状とする健康障害」のことを言います。
以前にもお話ししたように、腸は「第二の脳」と呼ばれるくらいで、外からの異物を脳より早く腸自身が判断して身体の外に排出する仕組みを持っていますので、下痢などはその生態反応の一つです。
この、身体の中に入った「異物」というのが問題なのです。
この異物にはどのようなものがあるかというと細菌やウィルス、原虫、寄生虫などによる「微生物性」の物
農薬、食品添加物、鮮度が落ちたサバなどの魚類に存在するヒスタミンなどの「科学性」の物
ふぐ毒や・魚介毒、キノコ、山菜など動・植物による「自然毒性」の物
の3つに分類されます。
この中で、もっとも多いのは微生物性の原因による「微生物性食中毒」と言われるもので、細菌やウィルスによる食中毒は90%以上と言われています。
その中でも、サルモネラ菌属、カンピロバクター、ノロウィルスの3種によるものが多く、全体の8割を占めています。
食中毒で特徴的なのは、同じものを食べたのに中毒を起こす人と起さない人がいるということです。
岩手大学の品川邦汎名誉教授によると、食中毒は、年齢・性別・栄養状態の良否・胃摘出などの基礎疾患の有無・食習慣の違いなど多くの要因があるとしています。
その中でも、特にハイリスクグループとして挙げられるひとは、乳児・小児・老人・病人・免疫機能の低下を示す人などになります。つまり、ある人が食べても問題が無い食品でも、別の人には問題があるということが十分にあるということです。
「ここで大切なのは、すべての食品はゼロリスクではないということです。」と同氏は言います。
食肉の場合でいえば、腸管内には腸内細菌が常在していますし、それは皮膚にもいます。これらの中に病原菌がいる可能性も十分にあるわけです。
鶏肉の例をあげれば、羽を抜いただけの状態で皮つきで食べていますし、魚でも皮のまま食べることは日常的にあることです。さらには、空気中にも無数の細菌やウィルスが存在します。
つまり、「食品にまったく食中毒菌を付着させないとか、完全に除菌するということは現実的に無理である。」という前提を忘れてはいけないということです。
食中毒から身を守るための3原則は「付けない」、「増やさない」「殺す」と言われています。
家庭の中では、「付けない」というのは、調理器具を使い分けるなどがこれに当たります。「増やさない」は、温度管理です、調理前に長時間室温で放置するということを避けるということです。最後に「殺す」ですが、代表的なのは過熱による調理ですが、加熱ほどの効果は無いものの塩分や酸を使って殺すという方法もあります。
年間で食中毒の発生が一番多いのは、一般的はイメージとして梅雨時の6月が多いように思いがちなのですが実は9月なのです。
気候的な条件は梅雨と台風のシーズンということで、高温多湿という意味で同じなのですが、食べる方のひとが夏をこえて体力的にダメージを受けているために発症しやすいというのが実際のところのようです。
そういう意味では、最大の予防策はしっかりと栄養を摂り免疫力も含めて健康状態を保つことだと言えそうです。
Posted by toyohiko at 12:02│Comments(0)
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