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2011年01月08日

人と微生物の共生関係を探る

人と微生物の共生関係を探る

 乳酸菌をはじめとし、微生物と人との関係について最近は徐々に知られるようになってきました。

 健康な人の場合、腸内に重量にして約1kgの微生物が存在しており、そのほかにも皮膚、鼻腔、口腔、泌尿生殖器にも億単位の常在細菌が見られ、それらすべての常在細菌の総数は100兆単位と考えられています。

 人の身体を構成する細胞の数が約60兆個とされているので、それより一桁多い微生物が私たちの身体の表面や内部に常に存在しているのです。

 一方、何種類位いるかというと人一人当たり腸内細菌で少なくとも300種類、(個人によって異なります)総数としては1000種類にも及ぶ常在細菌がいるとされていますが、その実態がいまだにわからない菌のほうが圧倒的におおいと多いとされています。

 そのような状況の中、ヒトと共生をしている常在細菌の実態を探ろうという研究が国際的にも注目を浴びるようになってきています。アメリカの国立衛生研究所でも2008年から5年間で総額1億1500万ドルという研究費が用意され、「ヒトマイクロバイオーム・プロジェクト」が立ち上がりました。日本をはじめ、イギリス、フランス、中国、カナダ、オーストラリア、シンガポールなど多くの国が参加し国際規模の研究体制も出来ているようです。

 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の服部正平氏によると、そのような流れについて「ヒトの心身の健康と病気をきちんと理解しようとしたら、腸内細菌のゲノム解析がかかせない、という認識が深まったということです。」と述べています。

 同氏によると、腸内だけでなく常在細菌はそれぞれの菌が複雑に共生しあっているために一つだけを取り出しても特徴や性質を把握することが非常に難しいために、微生物を1種類づつ研究・分析するのではなく細菌叢(そう)といった細菌集団全体を一つの微生物と扱ってゲノム解析などの研究・分析を行うことにより、大きな進歩が期待できるそうです。

 このような、ヒト常在細菌のゲノム解析の研究成果としてもいろいろな報告がなされています。

 英国の有名な科学誌の「Nature」に“肥満と細菌に関する実験研究”というタイトルで、肥満にかかわる遺伝子を操作した、肥満マウスから腸内細菌叢を取り出して、普通のマウスに入れたら肥満が起きたというような記事が掲載されたり

 また、皮膚の常在菌叢は全く同じ構成を持つ人は2人といない指紋のようなものであるという特性に注目し、犯罪捜査に利用するという発想もあるようです。常在菌叢を利用したほうが指紋のようにべったりつく必要がないため人物の特定にも有利な点もあるということです。

 そうした中、現在でもヒトの腸内細菌を中心に新しい種類の菌が毎年発見され登録されています。
2008年に8種類、2009年に5種類、2010年の9月現在で11種類、その24種類の菌の発見のうち17種類が日本のヤクルト中央研究所で発見されているのです。

これからも多くの発見によりことが色なことがわかってくるのでしょう

まだまだ未知の世界が多いヒトと微生物との関係、研究が進むことによってさまざまな可能性が期待できそうです。・・・・・


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Posted by toyohiko at 15:38│Comments(0)身体のしくみ
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