2010年11月26日
「平均寿命」と「健康寿命」の話

厚生労働省の発表によると、日本人女性の平均寿命は86.44歳で世界一。男性の平均寿命は79.59歳で世界第5位(昨年は第4位)と世界に名だたる長寿国であることは言うまでもありません。
一方「健康寿命」という言葉もあります。皆さんはご存じかどうかわかりませんがWHOで発表しています。2004年度のデータによると男性72.3歳、女性77.7歳とこれも世界一だということです。
「平均寿命」は「今年生まれた子供の平均余命」と言われており、死亡年齢の単純平均などではなく、複雑な積分方程式(数学の専門家からいえば単純な式のようですが)の結果求められるものです。
また、「健康寿命」は、それぞれの算出方法が微妙に異なるので、数字にこだわって突き詰めると訳が分からなくなってしまいますが、平均寿命の考え方からすると「比較的、健常な状態で生活が送れるまでの平均年齢」というようなことになるのでしょうか。
この「平均寿命」と「健康寿命」の差がないということが一番望ましい状況であるとこは言うまでもありません。そのためにも「老化」ということをしっかりと理解する必要があります。
「老化」を単なる身体の「劣化」ととらえるべきかというと、そうだけでもありません。たとえば知能に関することでいえば、物事を早く処理するような動作的知能は衰えますが、物事を洞察したり解決するような結晶的知能は、年齢を経て人生経験が増えるほど知能が高まるというデータもあるようです。
つまり、身体能力は一番ピークといわれる20代から70代になるとすべて落ちるかというとそうではないのです。
また、老化に対する対策として「健康管理」という言葉もあります。これは病気の発症予防のために体に関する情報を管理するということになりますが、
たとえば、コレステロールでいえば、高くても低くても死亡に関するリスクは高くなるのですが、それぞれ原因が異なります。
また、年齢によっても異なります。高い場合につては心筋梗塞や脳卒中のリスクになりますし、低い場合もがんになりやすかったり、肺炎などの感染症のリスクになるため最適なコレステロール値を規定するのは非常に難しいようです。
しかしながら、現実の問題として人間は歳を重ねるともに生活機能の低下が起こります。まず、最初に落ちるのは「移動能力」。次に「排泄能力」。最後に「摂食能力」だそうです。
治療という観点からすると老化を伴う摂食機能低下の場合は、胃に直接穴をあけて栄養補給することによって寿命を延ばすということもあります。
長野県のある町では、PPKというキーワードを目標に健康な生活を目指しているという話を聞いたことがあります。このPPKというのはピンピンコロリの頭文字だそうですが、「長患いせずに、ぽっくりと死にたい」これは、誰もが望むことかもしれません。
その言葉を裏返すと、現実にはあり得ない「ある日、ぽっくり」という状況に対する現実逃避であったり、本人の威厳やQOL(Quality Of Life)を維持するべきかどうかという価値観との葛藤なのかもしれません。
「家族や子供たちに迷惑をかけたくない、だからある日ぽっくり死にたい」と思わせる社会のことも含めてみんなが自分自身のこととしてイメージし、考える必要があるような気がします。
Posted by toyohiko at 12:05│Comments(0)
│身体のしくみ
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