2010年11月19日
「食物連鎖」だけでない生物同士の関係性

今年は、名古屋の地でCOP10開催されたこともあり、「環境」、特に生物の多様性についての関心が大いに高まった年でもあります。
生物同士の関係性を見たときに「食物連鎖」というキーワードがまず第一に思い浮かぶと思います。食物連鎖というのは、ある種の生命を維持したり、遺伝子を残すためにほかの種の生命をいただくという、自然界でのもっとも基本的な関係性のことで、食事のまえの「いただきます」の語源もここからきています。
「生産者」である植物、それを「消費者」としての草食動物、肉食動物が捕食し、死体や糞便を微生物が「分解者」として「生産者」である植物の養分として還元する。
当然、ここで「生産者」と「消費者」のなかで二酸化炭素と酸素という呼吸にかかわることも同じようになされていることも認識しておかなければなりません。
京都大学生態学研究センター教授の大串隆之氏によると、このサイクルが、一般的なサイクルで生物どうしの関係性の大きな要素として考えられてきましたが、この考え方だけでは説明がつかない生物どうしの関係もたくさんあるとしています。
ある場所に、植物を含む5種類の生物が共存していたとします。あるときその植物が絶滅したとした場合に、お互いに全く関わりがなければ4種類の生物が残ります。
しかし、生態系の中ではそんなことはめったに起こりません。残った4種類がその生物だけを食べる昆虫であればすべての生物がその植物と同時に絶滅することになりますし、逆にその植物が他の植物を寄せ付けないほどに競争能力の高い種であれば、ほかの植物に共存できるチャンスとなり、6にも7にもなる可能性もあるのです。
どのような結果になるかは生物間のお互いのかかわりがどのように作られ維持されているかの理由を知ることも大切なことです。
また、「生産者」である植物の特徴として、成長の過程で新芽、花、果実、種子というように変化することと、食べられることにより種全体が捕食されることは自然界では少ないこともあり死なずに変化するという点が「消費者」であるほかの生物に大きな影響を与えることになります。
ある種の昆虫が植物の葉を食べつくしたとしましょう。その枝は翌春に成長がよくなり勢いよく新芽が吹き出す。その新芽をめぐってほかの種の昆虫が生息しやすくなり、結果、生物の多様性が高まるということもあります。これは、植物が変化することによって複数の「食物連鎖」がつながりあって相互作用のネットワークができるのです。それを「間接相互作用網」と呼んでいます。
この考え方で、生物どうしの関係を見てみると、間接作用が40%、食う食われる以外の関係が60%、共生関係が40%を占めており、非常に複雑なことがわかります。微生物の世界などは、お互いの相互作用が複雑に入り組んでいるために、特定の種の特性を把握することが非常に困難だということを聞いたことがあります。
皆さんの周りにいる植物や昆虫、よく見ると数年前と変わっていませんか・・・?
特定の単純な理由ではなく、そんな、複雑な関係性の結果変化してしていることも少し考えてみるもの大切かも知れません。
Posted by toyohiko at 12:50│Comments(2)
│地球を考える
この記事へのコメント
生物の生態については、常に諸説あります。
もし、セミに話が聞けたとしても生息地の移動の理由はいろいろあると思います。
実際に、このアブラゼミの話は天敵からの逃避行動の習性の違いでクマゼミが優勢になっているという説を唱える人もいるようです。
もともと、生態系はもともと非常に複雑なシステムです。
あまり短絡的に原因を断定ぜずにいろいろなことがあるという認識が大切なような気がします・・・・。
Posted by toyo at 2010年11月22日 09:37
真夏には毎日のように蝉取りをするのですが、私自身が子供の頃はアブラゼミ優勢だったのが、最近ではほとんどがクマゼミです。
単純に、温暖化が進み、本来優勢であるハズのアブラゼミが北へ押し出されたものだと思っていましたが…
他にも理由はあるのかもしれませんね…考えさせられます。
Posted by iwako at 2010年11月19日 23:34
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