2010年09月25日
「良く噛んで食べなさい」の理由

「良く噛んで食べなさい」この言葉は昔からよく食卓で聞かれる言葉です。しかし、その理由については、「消化に悪いから・・・」「良く噛んで食べないと、変な所に栄養がついちゃうよ・・」など、なんとなくはイメージできるのですが実は良く理解できていないということが多いような気がします。
まず第1番目に「噛む」という行為は栄養を摂るやすくするために行うのですが、「栄養を摂る」ということをもう少し具体的に言いますと炭水化物やタンパク質、脂質などの栄養素を分解し、非常に小さな分子の形にして吸収することになります。
つまり、噛み砕くことで食べ物の表面積が大きくなって唾液中のアミラーゼなどの消化酵素の働きが高まります。特に、野菜などは人間が消化しにくいセルロースでできた細胞壁でおおわれているため、その細胞壁を砕くことで栄養を吸収しやすくなります。
また、二番目には食べ物を噛み砕くことによって「味覚」のみでなく「嗅覚」の両方の働きが表れます。
「味覚」は、噛むことによってその食べ物に含まれている、化学物質が唾液に溶けて、舌の味蕾が感じ取ることによって味を認識できます。小さい子どもが苦みや酸味に対して受け付けなかったりするのも、毒物には苦いものが多く、腐敗したものには酸味の多いものが多いことからも自分の身を守るなための本能的な行為とも言えるかもしれません。
「嗅覚」に関しては、食べ物のにおいが鼻をとおって鼻腔にはいってきて「匂い」を感じます。その「匂い」ですが、外から入るものより食べ物を噛んだときに「におい物質」が口の中から鼻の中に入り、感じる割合の方が多いとされています。
つまり、私たちが食べ物の「味」だと思っている感覚は、「味」と「匂い」が混ざり合った風味であることが多く、その中でも「匂い」が大きなウエイトを占めているのです。「鼻がつまっていて、味がしない」というのもこの理由からで、食べ物を美味しく食べるのにはよく噛んで「味覚」と「嗅覚」の両方を機能させることによって感じることができるようです。
三番目に、「噛むという行為はストレスを軽減したり、脳の活性化につながっている。」と神奈川歯科大学の木本克彦教授は述べています。ラットの実験でも、仰向けにしてお腹を張り出して貼り付ける実験をするとストレスマーカーが上昇するが、棒を噛ませることによって数値が上がらないという結果が出ています。
「歯を食いしばる」という言葉がありますが、単に我慢をして乗り越えるだけではなく、生理的にもストレスを発散したり、神経を活性化し新たに作る作用もあるとも言われています。逆に、歯が不揃いでしっかりと噛むことができなかったり柔らかいものばかり食べいると神経を新たに生み出す作用の割合(新生率)が下がっていくそうです。
一般的にニューロンなどの神経細胞は成人すると新生はしなくなり、一度壊れたらおしまいだと思われていたのですが、ここ数年の研究で脳の海馬などの領域ので成人の神経が新生することが明らかになってきていて、WHO(世界保健機関)でもアルツハイマーの危険リスクの一つに歯の損失を上げていることからも「噛む」ことと脳とは密接に関係しているようです。
つまり、「良く噛んで食べる」というのは、身体のための「栄養」だけでなく、美味しく食べて「食事を楽しむ」ことや、さらに頭もすっきりと「元気になる」ことにも一役買っているようです。
Posted by toyohiko at 16:02│Comments(0)
│身体のしくみ
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