2015年01月17日
赤ちゃんへの最初の贈り物

皆さんは、「赤ちゃんへの最初の贈り物」と聞いて何を思い浮かべますか・・・?
ある方は、産着であったり、産後の準備を思い浮かべる方も多いのではと思います。しかし、人類として進化してきた太古から母親から赤ちゃんへ引き継がれる大切なものが実はあるのです。
最近では、人間の腸内には数100種類、100兆個の腸内細菌がいることについて、多くの方が、ご存知かと思いますが、生まれて直後の赤ちゃんというのは、実は「無菌状態」と言われています。
ユーカリを食べることで良く知られているコアラをご存知かと思います。コアラの主食であるユーカリには、青酸(シアン化水素・HCN)という成分が含まれています。この成分は、血液中のヘモグロビンを結合し、酸素を体内で運べなくしたり、細胞中でエネルギーをつくれなくなる作用があるために体内に入ると危険なものです。
しかし、そこまでしてユーカリを食べるには、理由があります。一つは、他の種が食べられないものを主食することで飢餓に陥るリスクを回避するといことです。もうひとつは、青酸を食べても大丈夫なような腸内細菌が消化器官に存在するということです。
コアラのおなかの中のユーカリを食べるための腸内細菌は、実は生まれついて持っているものではありません。産後、母親の「便」を食べさせることによって母から子に引き継ぐ生きていくうえで大切な贈り物なのです。
実は、先ほど人間の赤ちゃんは「無菌状態」と言いましたが、人間もコアラと同じように、母親から腸内細菌をもらうようになっています。
出産が近くなってくると、母親の産道に乳酸菌やビフィズス菌などのいわゆる善玉菌類が集まってくるということは、多くの研究でも言われており、その産道を通過するときに体中に母親の持っている菌をもらうことにより、自分の常在菌のもととして腸内菌叢をつくっていくのです。
実際に、出産直後の腸内細菌の変化を調査した研究によりますと、出産当日はほとんど、無菌に近い状態なのですが、2日目から3日目にかけてビフィズス菌を中心とした善玉菌群が急激に腸内に増殖し、定着し始めるということが解ってきています。
つまり、その定着したビフィズス菌の多くは「母親からの贈り物」というわけなのです。
その後、離乳食を食べるようになり、他の細菌が入ってきたり、動き回るようになって色々な物を口に入れたり、舐めまわすようになることで、色々な菌を身体の中に取り込み、様々な環境に適応できる腸管免疫システムを少しずつ作り上げていくことになるのです。
その「贈り物」をより良いものにすることも実は、大切はことです。いくら良い菌が産道に集まってくるといわれていても、母親の腸内環境があまり良くない状態であれば、その結果をそのまま引き継いでしまうことになりかねません。
事実、帝王切開での出産児の場合は、分娩室も含めたその時の環境中の菌をもらってしまうということも、多くの場面で論じられています。特に近年、増えたといわれる、アレルギー症状の問題などは、免疫と腸内環境に大きく関わっていると言われています。さらに、分娩方法との関わりに関心が集まっており、アメリカの研究では、アレルギーの発症の割合が帝王切開の場合は5倍にも上るとさえ言われています。
「赤ちゃんへの最初の贈り物」は、その後の健康を大きく左右するということであれば、今のうちに出来ることは、やっておきたいと思うと思います。そのためには、母親である本人が、元気で健康であることが一番なのです。
更には、腸内環境を整えることを意識することが最も重要になります。そのためには、なるべく、化学合成の添加物を用いた食品を常食しない様に心掛けるなど、いつもよりも少し食事に気を使う。
そして、ストレスは、腸内環境に最も影響が出やすいので、ストレスの無い生活を心がける。
最後には、もちろん良い菌をしっかりととりいれることも忘れないように・・・
Posted by toyohiko at 11:05│Comments(0)
│身体のしくみ