2015年08月15日
知っておきたい腸と免疫の話(Ⅱ)

免疫といえば、ワクチンというかたちで抗原を取り込み、特定の感染症などに対する免疫システムを強化しておく方法が良く知られています。
一般的には、このワクチンは注射での投与が一般的です。国際粘膜ワクチン開発研究センターセンター長の清野宏教授によりますと、この方法は有効ではありますが、弱点もあるというのです。
例えば、インフルエンザなどの上気道感染症の場合のほとんどは病原体であるウィルスが鼻や喉などの呼吸器粘膜をとおって感染します。
注射型のワクチンの場合は、病原体が身体の深くまで侵入してきたときには、効果的に病原体を排除するのですが、病原体が侵入する粘膜面では免疫応答が誘導されないために、インフルエンザのウィルスが鼻の粘膜で増殖してしまうために、本人は発症しなくてもくしゃみなどをするたびに、他の人に飛沫感染させてしまうことがあるそうです。
これは、ワクチンの効果が呼吸器粘膜に作用しないために、粘膜面が坊行されていないからだと考えられています。
このような、粘膜免疫システムの研究がことによって注目されているのが、腸管免疫を利用した、経口ワクチンです。
これは、血液中に直接ワクチンを送りこむより、腸管免疫の司令塔としての役割を持つパイエル板を介して、免疫システムに作用する方が、身体全体のあらゆるネットワーク上に効果的に免疫システムを配置できるという考え方です。
このような、経口ワクチンの研究では今まで難しいとされてきた粘膜面にも免疫を誘導できることが明らかになっているそうです。
サルを使った実験では、血液中にIgGという抗体を誘導するのみならず、腸管の粘膜面にもIgAという病原体の誘導を阻止するための抗体が誘導されることが確認されています。
この研究で特に注目されているのが、MucoRice(ムコライス)と呼ばれるコメ型経口ワクチンで、おコメの中にワクチンの役割をするものをつくることによって、今までの様々な問題を解決していこうという考え方です。
現在の注射型ワクチンは、冷蔵保存が必要だったり注射針などが使い捨てのために医療用廃棄物の問題があります。さらに、日本国内ではあまり実感がありませんが、乳幼児を中心としたコレラの感染での死亡者数は、世界中で10万人以上とも言われています。
このような社会的な問題には、保存性や輸送の問題、さらには経口によって投与できるために特別な治療技術を必要としないなど、MucoRice(ムコライス)と呼ばれるコメ型経口ワクチンの実現にむけて大きな期待もあるようです。
しかしながら、国内でも農林水産省が中心となって食品として研究を進めてきということもあり、医療としての効果に関する様々な、解決しなければいけない問題もあるようです。
ワクチン開発の世界においても、腸管免疫を積極的に利用することで健康を保つことが有効であるという方向性が注目されています。
こうして考えると、夏バテと台風による湿度上昇の影響で年間で一番食中毒の多い9月を控え、私たちも日常の生活の中で、「腸の健康と免疫」ということを、今一度考えなおしていくもの大切なことかもしれませんね。
Posted by toyohiko at 22:47│Comments(0)
│身体のしくみ