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2017年01月14日

抗生物質と腸内フローラ

抗生物質と腸内フローラ


 私たちは、普段の生活で細菌やウィルスなどによる様々な感染症に対するリスクと戦っています。その代表選手がリンパ球なとの免疫システムになります。その免疫システムの多くが消化器官である腸に集中していることは、近年の様々な研究で明らかになってきています。

 そのような中、残念ながら感染症にかかってしまった場合の対応策として、多くのケースで用いられるのが、抗生剤によって菌を抑制するという方法です。

 抗生剤を服用した時に、「お腹の調子が悪くなる」とか「便秘がひどくなる」というような症状に悩んだことがある人もおられると思いますが、これも抗生剤の特徴で、「腸内フローラそのものを抑制してしまい、善玉菌、悪玉菌という菌株の性質によって選択的に抑制することが難しい」という結果による症状の一つと考えられています。

 その一方で、食品での特定保健用食品の許可表示の中にも「良い菌を増やし、悪い菌を減らして・・・」というような表示にも見られますが、「抗生物質には出来なくて、なぜプロバイオティクスと呼ばれる有用菌にそのような働きがあるのか・・・」というメカニズムが解明されつつあるということなのでここで紹介させていただきたいと思います。

 これは、2016年に発行された「ネイチャー・マイクロバイオロジー」に紹介された研究報告で、「悪玉菌の増殖を抑え、腸内細菌を制御するメカニズムを明らかにした」という形で掲載されています。

 この研究はでは、Ig(免疫グロブリン)と呼ばれる抗体の様々な種類を解析し、その性質を明らかにすることで分かってきたことの一つであるそうです。

 Ig(免疫グロブリン)の中でも、IgAという種類の抗体が腸管内に大量に常在していて、腸管免疫の主役的な抗体であるということは良く知られいることのようですが、IgA抗体の中でもW27IgAという形の抗体が、「大腸菌などの悪玉菌のみを攻撃し、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を抑制しない」ということが分かってきたのです。

 もう少し、詳しく説明しますと、W27IgA抗体は、最近の増殖に関わる代謝酵素に含まれる、一部分のアミノ酸の違いを識別することで、それぞれの菌に対する攻撃としての作用を識別しているということのようです。

 抗生剤のように、「菌の抑制に対して、選択性が難しい・・・」ということでななく、特定の菌株の特性と特定の抗体の特性を組み合わせることで「腸内フローラの選択的制御」が可能になるのであれば、私たちの健康に対してもある意味の劇的な変化のきっかけになるのかもしれません。

 この研究の報告でも、「腸内細菌叢の選択的な制御が出来るW27IgA抗体は、初めての抗体医薬品候補になりうる・・・」と医薬品の世界での今後の展望にも触れていたそうです。

 腸内フローラの研究が、これからの「私たちの健康を支える礎」になっていくという期待が益々高まって来るような気がします。




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Posted by toyohiko at 12:53│Comments(0)身体のしくみ
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