2017年03月18日
ストレスと乳酸菌

ストレスは、現代において人の健康を保つうえで、大変重要な位置を占めてきたということについては、誰もが否定できない状況になってきています。
また、強いストレスが発症のきっかけになると言われている病気には、うつ病や過敏性腸症候群などQOLに多大な影響を及ぼす病気も少なくありません。
私たち身体には、ストレスに対抗する仕組みがあると考えられています。その中で注目されているのが、「脳腸相関」と言われるような、「脳」と「腸」との関係です。
一般的には、ストレスに関わる心身状態の改善には、脳に作用する治療がおこなわれる事が多いのですが、「腸からのアプローチで、心身状態の改善が出来ないか・・・」というような研究もされています。
今回は、ストレスと乳酸菌の入った飲料の飲用によるストレス緩和作用に対する研究がおこなわれましたので紹介します。
今回の研究は、徳島大学大学院歯薬学研究部病態生理学分野准教授の西田憲生氏を中心に、徳島大学の医学生140名を対象に行われました。今回の研究は、医学生が4年生から5年生に進級するときに受験するCBT(Computer Based Testing)と言われる全国共通の試験の受験者を対象に行われました。
いうまでもなく、試験というのは非常にストレスのかかるものだと思いますが、その受験者を対象に乳酸菌シロタ株(L.カゼイ・シロタ株)の入った飲料と乳酸菌シロタ株の入っていない疑似飲料(プラセボ)を受験の8週間前から毎日1本を飲んでもらうという方法を用いました。
評価手法としては、「STAI(State-Trait Anxiety Inventory)という自己評価」、ストレスのバイオマーカーとして良く知られている「唾液中のコルチゾール」、「末梢血液中の遺伝子パターンの解析」、「腸内フローラの解析」の4つの指標を用いました。
STAIの評価結果からしますと、いずれの学生も試験の1日前まで非常に不安を感じ、ストレスを抱えているという結果になりました。このことは、CBT試験の様な人生の大きな岐路に立ち向かう時に大きなストレスを感じるということは、ある意味正常な反応であると同時に、改めてこのようなケースでは、ストレスを感じるということが明らかになったと言えると思います。
2番目以降の評価項目は、生態指標でもあるのである意味、客観性があるとも言えますので、研究としてはこちらの結果の方か興味深いものになると思います。
コルチゾールの分泌量では、2週間前までは両者ともに上昇していきましたが、試験直前に向けての上昇率はむしろ異なり、1日前では、乳酸菌シロタ株の非飲用群では2週間前の1.5倍ほどになったのに対して、乳酸菌シロタ株の飲用群では、2週間前の8割程度に抑えられて、むしろ下がったという結果が出ています。
遺伝子レベルでの調査では、ストレスホルモン等の影響での血球の遺伝子の活性化を調べたところ、2週間前は、両者ともに100位だったのが、非飲用群が試験前日に176まで上昇したのに対して、飲用群では、86という低い数値に抑えられてました。
さらに、腸内フローラの解析結果では、飲用群では悪玉菌の代表選手であるバクテロイディス科の増殖が抑えられ、多様性が増したという結果になりました。
これらの結果からしますと、乳酸菌シロタ株の継続飲用で特別な反応をするのではなく、マイルドにストレス反応の抑制をするということが示されました。腸内フローラの解析結果からしての、ストレスと悪玉菌の関係についても、ある種「ニワトリと卵」の様な状況で、どちらが、主体的に作用しているかどうかもまだこれからの研究によるところが多いです。
ラットの実験では、乳酸菌シロタ株が胃の中に入ることで胃の迷走神経が活性化されると同時に、ストレス時の交感神経の抑制反応が起こることもわかってきています。
「脳腸相関」という言葉が、一般的になりつつある中、腸だけでなく消化器官全体と腸内細菌・・・さらには脳やストレスとの関わりについて、これから様々な事が解明され私たちの健康に大きな未来を示してくれると良いですね。
Posted by toyohiko at 11:47│Comments(0)
│身体のしくみ