2020年08月12日
歯周病と糖尿病の「負の相互作用」

口腔内の健康と感性症予防という意味も含め「歯磨き」・・・特に「朝イチ歯磨き」の重要性が注目されつつあります。
口腔内の代表的な感染症と言えば、ミュータンスなどの虫歯菌による歯の「う蝕」や、ジンジバリスなどの歯周病菌による歯周病といわれる歯茎から始まる全身に関わる炎症です。
特に、歯周病菌については体内の多くのところで発見されることがあり、他の疾患との関わりについての研究もなされているようです。
国立国際医療研究センター糖尿病情報センター長の大杉満氏によりますと、歯周病は、ジンジバリス菌を中心とした歯周病菌のプラークが歯周ポケットに入り込み歯茎から炎症が起きていくことで発症します。
そのため歯周病は進行がゆっくりとしており自覚できにくいという特徴があります。またその症状は、40歳を過ぎるころから急増し、55歳以上では50%以上が歯周病といわれているほど多くの人に見られる症状といわれています。
心当たりの方は、次の6つの項目を一度チェックしてみると良いかもしれません。
歯茎がむずむずしてかゆい
歯茎が浮いた感じで腫れぼったい
歯を磨くと歯茎から出血する
朝起きた時に口の中がネバネバしている
歯茎を押すと血が出る
口臭を指摘された、又は自分で口臭があると感じる
この中で、3つ以上当てはまる場合は、軽度~中程度の疑いがあるといわれています。
近年になって多くの専門家が関心を示していることは、「歯周病」と「糖尿病」という、一見違う病気と考えられている2つの疾患がお互いに「負の相互作用」をしてしまっている事が次第に明らかになってきたことです。
前出の大杉満氏によりますと、糖尿病などで血糖値が常に高い状態にあると白血球の働きが低下してしまうことが解っています。その結果、免疫力が低下した状態になります。
つまり、糖尿病の方は、歯周病菌に対する抵抗力も低下してしまうために歯周病にかかりやすくなるという事が言えるそうなのです。
更に、高血糖の状態が続くことで歯の組織が劣化したり、血行が悪くなり歯周病にかかりやすくなると同時に歯周病菌が産生する毒素が血液を通じて全身に巡るとともに、インスリンの働きを低下させ症状も進行しやすくなるといわれています。
糖尿病の合併症として知られている動脈硬化は血管の慢性炎症になりますが、歯周病の炎症も動脈硬化を悪化させる可能性が指摘されています。
そのようなこともあり、糖尿病の方は、歯周病の進行が早く、かつ治りにくいとも言われています。
歯周病の治療の基本は丁寧なブラッシングでプラークを取り除くことになりますが、歯周病の治療により、毒素や炎症の軽減によってインスリンの働きがよくなり血糖コントロールが改善することも明らかになりつつあります。
糖尿病診療ガイドライン2019によりますと、歯周病を治療したことによって、ヘモグロビンA1cが0.29~0.66%低下したという報告もあるようです。
このように、歯周病と糖尿病との関係は歯の周りにこびり付いたプラーク(バイオフィルム)を通じて、健康に対する「負の相互作用」を繰り返すことになりますので、丁寧かつ効果的なブラッシングは健康のためにも重要な習慣になります。
Posted by toyohiko at 15:44│Comments(0)
│身体のしくみ