2021年05月08日
腸内細菌とメンタルヘルス

前回、ASD(自閉症スペクトラム)と消化器症状との相関性や腸内細菌叢との関係性についてご紹介させていただきましたが、鬱症状に代表されるようなメンタルヘルスと腸内細菌の関係についても注目が集まりつつあります。
また、現在の様々な研究では、鬱症状の患者と健常な状態の人の腸内細菌叢の有意な違いに対する報告が見られるようになってきました。
このことは、脳腸相関という考え方も含めてメンタルヘルスの改善に対する新しいアプローチの一つとして、大きな期待が寄せられるようになった結果の一つとも言えます。
昭和大学精神医学の真田建史准教授によりますと、そのような状況下において、日本国内では、うつ病患者と健常者においてビフィドバクテリウムとラクトバチルス二つの菌株を調べた報告があるのみで、「腸内細菌叢」と「うつ病」という二つの関係性について体系的なレビューとして、しっかり提示してると言えるような研究報告はなく、期待の大きさに対して、十分なエビデンスが確立されていると言えるような状況にはないと述べています。
しかしながら、鬱症状の患者にSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)とプレバイオティクスを8週間併用することで投与前に対して、鬱症状が優位に改善したという報告があるなど、腸内細菌叢や短鎖脂肪酸などの代謝物に対する特徴や作用のメカニズムについても、さらに関心は高まりつつあります。
セロトニンに関して言えば、脳内の幸せホルモンとして有名なホルモンですが、実際にはその多くが、腸管神経でつくられており、腸の蠕動運動を司る大切なホルモンになりますので、腸と脳についての関係性の高さは言うまでもありません。
真田建史准教授による、大うつ病障害(MDD)患者の腸内微生物叢を調査した、延べ1,003名を対象とする16の研究の体系的なレビューとメタ分析によりますと、プロバイオティクスを利用した試験では、投与前と投与後での腸内細菌叢の違いと鬱症状の有意な改善が認められたとしています。
ASD(自閉症スペクトラム)と便秘や下痢、さらに過敏性腸症候群の症状に表れるような慢性的な腹痛などの消化器症状との関係性と共に、プロバイオティクスの投与による鬱症状の改善などは、まだまだ、研究例が限られているために明確なメカニズムの解明には至らないものの、「お腹の健康」と言われるような消化器症状を一つづつ改善していく事が、日々の気分の高揚につながる可能性があるのであれば、「メンタルヘルスの向上のため」に、プロバイオティクスやプレバイオティクスを活用した「お腹の健康」を意識することもありなのかもしれませんね。
Posted by toyohiko at 12:13│Comments(0)
│身体のしくみ