2022年07月15日
「空気を読む」について考える・・・Ⅱ

空気を読み過ぎてしまう人の特徴として、他人の感情の変化に気付き、「自分のせいかも・・・」と考え込んでしまったり、事件、事故や災害などの報道を見聞きする度、自分のことのように感じとってしまうために、様々な情報によって気分が落ち込んでしまう傾向が強いという事は以前にも紹介させていただきました。
その一方で、「空気を凍らせてしまう・・・」タイプの人がいるのも事実です。
こういったタイプの人は、自身の言動が誤解を生みやすい状態になっている可能性を考える必要があるかもしれません。
具体的には、「正論を鋭く言いがち」、「批判する癖がある」、「自分の成果に目が向きすぎている」というような特徴があるとされています。
前回も言いましたように、人間はだれしも、「自分の意見を大切にしたい・・・」とか、「他人に言われると・・・」というような自前主義バイアスが働きます。それゆえに、「正論」という逃場の無い主張というものは、必要以上に相手を追い込んでしまいます。
もちろん、論理的に意見を述べることについては重要なことになるのですが、相手の状況や感情に配慮することなく正論を突きつけて相手を追い詰めてしまうと「ロジカルハラスメント」になってしまいますので注意が必要です。
また、人を批判する癖がある人は、その攻撃性ゆえに周囲から「面倒くさい人」という印象を与えてしまい、伝えたいことがうまく伝わっていない可能性を考える必要があるそうです。
さらに、「ウィンザー効果」と呼ばれる、面と向かって聞く「直接的な情報」よりも、第三者を通して伝わる「間接的な情報」のほうを、より信頼してしまうという心理的傾向を理解し、「本人のいないところで批判する」ことが大きなリスクになる事を注意しておくことも必要です。
実際に、「職場での信頼関係の崩壊を経験したことがある」と答えた人が、信頼が壊れた理由として挙げたもののうち、最も多かったのが「辛辣でネガティブな言動を人づてに聞いた」というものだったという報告もあります。
批判や意見を述べるべきタイミングは、アドバイスを求められてからということに心掛け、相手は自分の意見を欲しがっているのかどうか、先に確認する癖をつけると良いそうです。
「仕事ができる優秀な人」とされる人たちが突き当たる壁として、「感情の壁」があるとされています。
これは、「成果を上げたい・・・」という感情に支配され、周囲の心がわからなくなってしまう状態のことを指すそうで、次のような状況が挙げられます。
・自分の案を通したい気持ちが強く、他人の意見に耳を傾けない
・商品の良さばかりを伝えたいあまり、お客さまの気持ちを考えず、
一方的に商品の説明をしてしまう
・成果重視になり過ぎ、無理なスケジュールをメンバーに要求する
などがあるそうです。
2005年に、行動心理学者が10,000件に及ぶデータをもとに行った調査では、次の4つのタイプのうち、どのタイプが「一緒に働きたい」と思われやすいかを調べたところ、以下のような順番になったというのです。
1. 「愛されるスター」……好感度が高く、仕事もできる
2. 「愛される愚か者」……好感度は高いが、仕事はできない
3. 「有能で嫌な人」…… 好感度は低いが、仕事はできる
4. 「無能で嫌な人」…… 好感度が低く、仕事もできない
紹介した事例のように、「空気を凍らせてしまう・・・」タイプの人は、自身の想いはともあれ、思っている以上に周りからみると不機嫌に見え、面倒くさい存在になっている可能性を認識しておく必要があるのかもしれません。
この「不機嫌さ・・・」に対して、「空気を読み過ぎてしまう・・・」人は、「人を不機嫌にしてはいけない」と過度に責任を感じてしまい、良好な関係を保つために相手の求めるように振る舞うなど、先回りして相手の機嫌をとってしまうような関係が出来上がってしまうことが多いとされています。
このような方法で良好な関係を保つことは、一見良さそうに見えますが、相手の反応を気にし続けることで、非常にエネルギーを消費してしまい、気付かぬうちにストレスが溜まってしまいます。その結果、身体にも影響が出る可能性を考えなければいけません。
しかも、相手は、「空気を読み過ぎてしまう状態のあなた」を分かってくれる存在のように感じ、あなたが先回りのケアをしなくなった時には関係性は突然崩れてしまうことを考えておかなくてはなりません。
かのゲーテも「人間の最大の罪は不機嫌である」という言葉を残しているとされています。
このような、状況にならないためにも「自他の境界線・・・」、つまり、自分と他人は別のものという感覚を大切にする必要があるとされています。
そもそも、自他の境界線は曖昧で変化しやすいものです。
例えば、強いストレスがかかっている時や、家族や同僚など相手が近しい関係、さらに、他者からの評価を重視する風土は、自他の境界線が曖昧になりやすい状況とされています。
このように自他の境界線の曖昧さは誰にでも起こりうることで、状況や相手によって変化がしやすいことを自覚し、目の前の問題に対して、「これは自分の問題」「これは相手の問題」ときちんと「課題の分離」をすることが大切です。
理想は、「他人の問題」を1人で背負わず、なんとかしようとしないことですが、まずは意識してみるところから始めましょう。
特に、空気を読み過ぎてしまうタイプの人の場合は、「何を心配して自己犠牲をしてまで相手の機嫌を取ってしまうのか・・・」、相手の気持ちをケアしないことで、「嫌われること」「見捨てられること」なのか・・・を考え、そういった関係を望んでいるのか・・・という事も確認していく事が大切です。
その一方で、思わず不機嫌になり「空気を凍らせてしまう・・・」タイプの人は、ニューサウスウェールズ大学での組織行動学についての研究にもあるように、そのような態度によって、周りに気を遣わせたりしてしまうことで、結果的にチームにマイナスの効果を与えているという認識を持つ必要があると思います。
「機嫌は自分でとる・・・」という言葉がありますが、不機嫌な態度も、落ち込んだり、弱音を吐くような態度もチームにとってはプラスにはなりません。
多様性が重視される社会だからこそ、「相手の気持ちに立って・・・」という言葉を共有することが難しくなってきます。
だからこそ、「アイ(I)・メッセージ」を大切に、最低限のルールやマナーをお互いの中で、構築し続ける風土がますます必要になってくると思います。
Posted by toyohiko at 15:34│Comments(0)
│社会を考える