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2023年01月06日

経験から得られるもの

経験から得られるもの


 経験には様々なものがありますが、いっぽうで、解釈も様々な意味になってしまうというややこしさがあります。

 言い換えれば、複数の人間が同じ教訓を引き出すということはほとんどないということになります。つまり、人は経験から様々なことを学ぶ・・・という考え方も、「その人なりの解釈・・・」によって、多くの経験からも、特定の教訓しか得ることがないという可能性を理解しておく必要があるということです。

 すなわち、経験をどのように利用するかは、その人次第である・・・ということになるのです。

 たとえば、何らかの誤りを繰り返してしまうパターンなどの場合にも、誤りそのものを認めたとしても、その後の結果、「また繰り返す・・・」という確率が高いという現実もあります。

 「ずっと、こうしてきたから・・・、今更変えられない」、「親や、ほかの人のせいにする・・・」「教育や社会という、漠然とした大きな枠組みのせいにしたり・・・」という思考の結果、現状の理解を正当化するというように、ある種の情熱をもって誤りに固執してしまうことはないでしょうか。

 こうして、考えると人間が変わるプロセスは簡単なものではなく、人間が変わるには、慎重さと忍耐、として何よりも、個人的な虚栄心ともいえる承認欲求に対して、距離をおいて付き合うことが大切なことだと言われています。

 非認知能力という言葉があります。学力などと言われる認知能力ではない対人的なものや、レジリエンスなど、答えのないものに対して立ち向かっていったり、あきらめないチカラもこの非認知能力にあたります。

 幼少期の「遊び」は、この非認知能力を育むために大切な行為だと言われ、その分野に関する研究も進みつつあります。
 その研究によれば、「楽しく遊ぶ」には遊び相手の気持ちを理解する必要があり、自分の思うまま・・・ばかりでは楽しくないという経験を積むことで、相手の気持ちを推し量るチカラを身に付けていく事につながるとも言われはじめています。

 人と人とをつなぐ関係性を大きな枠組みで表現したものが社会です。そして、社会は分業という形で支えあってこそ成り立っています。

 オーストリアの精神科医で心理学者のアルフレッド・アドラー氏によれば、「本来分業は、人を分けるものでもなく結び付けるためのものと考える必要があります。誰もが他者を助けなければなりませんし、他者と繋がっていると感じる必要があります。そうすることで人間の精神に求められる大きな結びつきが成り立つのです。」と述べています。

 そしてこの結びつきを「文化」という言葉で表現しています。
 だからこそ、人間の社会性は必然だともいえます。

 また、アルフレッド・アドラー氏は、著書「人間の本性」で社会性を阻むものとして、次のようにも述べています。

 「甘やかされた子どもは、困難の克服を練習する機会を与えられていないのでその後の人生に対する準備がほぼできていません。暖かい雰囲気の小さな領域から出て人生に向き合えばほぼ決まって反動を受けます。そこにはひどく甘い親のように過剰に義務を果たしてくれる人はいません。」

 そして、その子どもについても、「その対象となる子どもは、多少なりとも孤立します。彼らにとっても人生には良いイメージはありません。繰り返し至る所で悪い印象を受けると予測しているからです。そして、自分の人生や課題は特別に困難だと思っていますから、破綻が起きないように注意しながら自分の境界を守ろうとし、いつも不信の目で周囲を見ているのです。」と、「甘やかされた経験」によって、物事のとらえ方の偏りが起きてしまうという可能性を指摘しています。

 更に、こうした子供に共通するもう一つの特徴として、お互いに支え合うことで社会が成り立っているという「共同体感覚」があまり育っていないとも指摘しており、ものごとに対しても「他者よりも自分のことを考える」という捉え方が顕著であり、全体的に世界を悲観的に見る傾向が強いとも述べています。

 経験をどのように捉えるかで、その後について大きな違いが出てきてしまうという現実とともに、その一方で健全な社会生活を送るためには、「お互いに支え合う・・・」という共同体感覚が大切であり、その感覚を阻む要因の一つに自己承認欲求があることも理解できると思います。

 かの松下幸之助氏は、「素直さ」の定義について、著書「素直な心になるために」で次のように述べています。

 まず一つ目は、「現状を受け入れる」ことの大切さについてです。どうしても人は、目の前の現実に対して、ジブンゴトとして受け止めることが苦手だったりします。先ほども申しましたように、他者や、社会という実態のないものに対して責任を転嫁してしまいがちです。だからこそ、自分の問題として受け止めることが大切だという事なのです。

 そして、二番目は、その現状に対して「前向きに対応する」ことだとしています。これは、自分の問題として受け止められればこそ・・・という側面もありますが、「前向きに・・・」という姿勢が多くの支えや、頼るチカラにも繋がるのだと思います。

 また、松下幸之助氏は、「素直さ」が無い・・・弊害として、「人の話を聞けない故に、人の知恵を活かせない」ことや「人が話をしてくれなくなり・・・、支えてくれなくなる」とも述べています。

 経験によって得られるもの・・・も、必ずしも同じではなく・・・現状のこだわりを強固にしていくために利用してるだけかもしれないという認識をもって、様々な経験に対して向き合っていく必要があるのかもしれません。






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Posted by toyohiko at 15:38│Comments(0)社会を考える
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