2016年08月12日
栄養情報の消化不良

現在の日本では、「ビタミンCの多い食べ物は・・・?」などの質問に、多くの人が「レモン」や「イチゴ」などの具体的な食品の名前を上げることが出来るのはある意味「ごく当たり前」のことになっています。
しかし、世界的にみると国民全体が、このような豊富な栄養に関する知識をもっているということは珍しいことのようです。
このことは、日本における栄養教育の成果の一つとして評価されていますが、その一方で、知識があるからこその日本特有の現象が起きているという指摘が多いのも事実のようです。
日本の食生活と言えば、最近、世界遺産にもなった「和食」にあらわされる日本古来の食習慣ですが、「刺身」や「てんぷら」というようなメニューだけ取り上げてみても、日本食本来の価値を表してはいないという専門家の方も多いようです。
東京家政学院大学の江原絢子名誉教授は、「自然の恵みを大切に使うという習慣の中で育まれた調理方法、食材の多様性が、「和食」のなかで大切にしてきたこと・・・」と述べているのと同時に、ご飯を主食に汁を付け、いくつかの菜を組み合わせて食べるという特徴がパターン化した「一汁三菜」という基本型が和食の内容を豊かにしたのでは・・・という考え方をしています。
例えば、煮物にしていた野菜が旬を過ぎて手に入りにくくなれば、別の野菜を使うとか、魚が経済的に無理な場合においては豆腐に置き換えるなど・・・パターン化したなかでアイテムを自在に置き換えるという構造が重要だと言います。
さらに、醤油や味噌などの発酵食品を使うということも和食というものを大きく特徴づけるものの一つになっていることは間違いありません。
結果的に、あまり栄養素ということを意識しなくても、身近で手に入るものを中心に、ご飯と主菜には魚や肉などの動物性食品と副菜として野菜・芋・豆類などを組み合わせて具だくさんの汁を用意すれば比較的簡単に栄養バランスがとれるのが「和食」の特徴の一つであったともいわれています。
しかしながら、社会の変化や食習慣も変わり、「普段はコンビニ中心で、たまにはグルメ・・・」というような方も珍しいことではなくなってしまった現在・・・知っている栄養素だけに着目しすぎてしまう傾向が強まってしまったという感じがします。
「普段は、外食が多いけれど朝はスムージーを飲んでいるし、サプリメントも飲んでいるから大丈夫・・・」というような人が増えたことも現実です。
今は、栄養情報があふれていて中には明らかに誤った知識を信じている人は意外に多いと言われています。
以前、「あるある大事典」という健康情報番組がありました、この番組は情報のねつ造の疑いで廃止になったのですが、その当時医者などの専門家の中で「あるある被害者」という言葉が流行したという話を聞いたことがあります。
ある食材を取り上げると、その食材が日本中の売り場から無くなってしまうほどの社会的影響力を持った番組であったからこその、それぞれの立場の思惑が「人間の健康」という本質的なテーマとはずれてしまったからこそ起きでしまった現象のひとつだったと思います。
このような状況の中、栄養教育の次なるステージの重要性に対しての取り組みの必要性を訴える声も出てき始めています。その一つが、公衆栄養学の確立の必要性です。
欧米では、食事が健康に及ぼす影響を栄養士が個別にフォーローアップしていく活動を進めています。また日本でも、日本栄養士会を中心に「栄養ケア・ステーション」という栄養士が地域に出向く形での栄養相談会の実施を進めています。
「何が正しい・・・?」という疑問もあるかもしれませんが、人間の身体は複雑な故、もっと総合的な視点で食事というものと関わる視点がこれからさらに求められるかもしれませんね。
Posted by toyohiko at 16:07│Comments(0)
│食の文化