2013年12月28日
甘酒と健康

甘酒といえば、お正月の代表的な飲み物としてもよく知られている飲み物です。甘酒はお米と麹を使って作られるのですが、ここ最近は、なんでも美味しくできる万能調味料としての塩麹が注目を集めていますので、麹そものもについても馴染みのある存在になってきていると思います。
あらためて、この麹について考えてみますと、麹というのは菌類という仲間になります。菌類というのは、植物でもなく微生物でもない中間的な存在です。菌類でよく知られているものとしては、キノコとかカビなどがこの仲間になります。
菌類というのは、他の物にくっついて分解し、いろいろな成分を出すという特性があります。キノコであれば、名前のとおり樹木などの植物などを分解して土を作ります。麹であれば、糖類を分解してブドウ糖や必須アミノ酸やビタミンB群を代謝します。このように代謝されて出てきたものに対して、我々は、「発酵」とか「腐敗」という名前をつけます。
一般的に、人間が口に入れた時に有益なものをもたらす菌類の活動を「発酵」。有害なものをもたらす場合を「腐敗」といいます。この「人間にとって」というのがポイントで、人間にとって有害かつ、不快な臭気を放つものであってもほかの生物にとっては有益な場合があるということなのです。
更に、「木が腐る」という表現をするように、人間が食べるようなことがない場合は腐敗という表現をしますが、森林などの食物連鎖を含めた自然の中の循環システムという意味では大変重要な役割をしています。そう言った意味では、麹は菌類の中で人間に有益な働きをするものの代表選手と言えると思います。
この麹を使った食品は、味噌、醤油、清酒などいろいろありますが、比較的手軽に作ることができるもののひとつが、甘酒です。
甘酒は、日本酒の酒粕に砂糖を加えてつくる「酒粕甘酒」と、米と米麹でつくる「こうじ甘酒」の大きく分けて二つに分けられます。
「こうじ甘酒」米のデンプンを麹で糖化させ、タンパク質をアミノ酸に分解したものです。これはお酒を作るという工程で言えば、アルコール発酵の手前ということになります。すなわち、甘味と旨みの溶け合ったノンアルコール飲料です。この旨みというのは麹菌が作り出したアミノ酸で、更にビタミンBも多く麹菌によって産生されますので、疲労回復や老化の原因となる活性酸素を抑える酵素の働きにより、アンチエイジング効果もあると言われています。
この、「甘酒」という言葉は、俳句の世界では夏の季語になっており、江戸時代には街中を売り歩く“甘酒売り”の姿が、夏の風物詩にもなっていたようで、夏バテ対策の栄養補給飲料であったというような歴史もあるようです。
アルコールの入った、「酒粕甘酒」の好きな方も、「こうじ甘酒」の方が好きな方も、長くから飲まれている文化というだけでなく、長く飲まれている健康を支える理由があるということも思い浮かべながら「甘酒」をいただくのもいいかもしれません。
Posted by toyohiko at 16:43
│食の文化